「絵本ではじめる講習会」開催報告
はじめに
6月25日(月)本山青少幼年センター準備室及び北海道教区青少年のご協力のもと、参加者・スタッフ併せ約50名が集まり、「絵本ではじめる講習会」が札幌別院を会場として開催されました。
この講習会は、日頃より各寺院で活動されている子ども会、また、将来子ども会活動の実施を望む寺院にとって、青少幼年教化活動の一助になればとの思いから、実行委員を中心に実施に向けて取り組まれ、今年度、当教区において開催されることとなりました。
当日の日程は午前10時より始まり、講義1「絵本の良さについて」・講義2「絵本の読み聞かせ方について」の両講義を青田(あおた)正徳(まさのり)さんよりお話をいただき、続いて講習「わらべうた遊び」を茨木(いばらぎ)京子(きょうこ)さんより受講しました。
絵本、それは未来への架け橋
絵本のお仕事に携われて約30年という今回の講師、青田正徳さん。現在、札幌市手稲区で「ちいさなえほんや ひだまり」という絵本屋を営まれる傍ら、テレビやラジオの出演、また北海道各地を回って講演会活動をされています。その青田さんから講義の中で、様々な絵本をご紹介くださいました。そのひとつに『だめよ、ディビッド!』(評論社)がとても印象的でした。この本は、お母さんと7歳位のやんちゃなディビッド少年を描いたストーリーです。家で野球をしたり、スーパーマンの格好をしてふざけたり、おもちゃを片付けなかったりと、いたずらの限りを尽くすディビッドは、いつもお母さんに「だめよ!だめよ!」と怒られます。でも、最後はお母さんに優しく抱きしめられるのでした。
まるで我が家の出来事をそのまま描いたこの絵本。可愛い絵と、決して他人事ではないストーリーに魅了され、早速、書籍を求めました。家に帰るなり読み出すと、絵と言葉が織り成すリズムが軽快で、何度読んでもおもしろさ請負です。そして驚くべきことは、子どもと一緒に繰り返し読んでいるうちに、まだ文字の理解できない幼子が、いつの間にかひとりで頁をめくり、声を出して読んでいるのです。絵を覚え、読み手の声を一言一句聞き取っていたのです。
青田さんは次のようにお話くださいました。「読み聞かせは、文字の読めない子どもたちに読んでいるのではありません。聞き手は絵を読み取りながら文を聞いています。しかし、これでは読み手と聞き手の関係は仮縫いの状態で、まだ仕上がっていません。聞いている子どもと、読んでいる親が一緒にお話を作っていく作業があるのです。耳から豊かな言葉が聞こえてきて、絵を見ながら物語をどんどん膨らませていく。この作業が子どもと親の楽しい時間になっているのです。ですから、決して字が読めないから字を読んであげているわけではありません。」と。
読み手である私は「聞かせてあげる」という思いで、聞き手である子どもに絵本を読んでいたように思います。それは川の流れの如く上から下への流れです。おそらく青田さんの観点は、初めは川の流れかもしれないが、繰り返し読むことで、やがてその流れは海となっていく関係が生まれてくると言われているように感じました。つまり、読み手も聞き手も共に相俟って、波のように寄せては返し、共有できるものとなるということではないでしょうか。
絵本を通じて子どもたちに何を伝えていくか。それは、ひとつには「生きることは喜びである」ということ。ふたつには「美しいものを美しいと感じる感性を子どもたちに育てたい」ということ。青田さんは絵本を読むことで、そのことを親子で一緒に感じ合えればいいと教えてくださいました。きっと、子どもにとって、絵本を読んでもらっている時間は親に怒られることのない、楽しい時間であるはず。たくさんの愛情が注がれるそんな時間があればあるほど、優しく豊かな関係が親子の架け橋となって育まれると思います。
魔法のことば
続いて、「わらべうた遊び」では、会場の椅子を取り払い、広い場所で身体を使って講習を受けました。親子一緒に参加できる内容とあり、子どもたちは大はしゃぎ。そのような中で「何があっても大丈夫!」と終始笑顔でお話くださったのが、札幌市東区で活動されているNPO法人子育て応援「かざぐるま」の茨木京子さんです。茨木さんは保育活動を通じて、「つなぐ・育ちあう・学びあう・伝えあう」をモットーに子育て応援の仕事をされています。
今はもう昔ですが、ひとつ屋根の下で暮らした祖父母から「わらべうた」を聞いた記憶が微かに残っています。だから、親世代である参加者やスタッフにとっては、どこか懐かしいものがあったように思います。茨木さんは少ない時間の中で、いつくかの「わらべうた」を全身で教えてくださいました。そのひとつに、親が子どもの身体を触ってあげる遊びがありました。きっと、この遊びから、子どもは肌と肌の触れ合いによって安心を得、穏やかな気持ちが育つのではないかと思いました。そして「わらべうた」について、「真っ当でわかりやすい子育ての道標・子どもと大人を楽しくつなげる魔法のことば」ということを教えてくださいました。
おわりに
時代の移り変わりとともに核家族の割合が多くなったことで、家族の中の世代間のつながり、地域のお年寄りや大人たち、年の離れた子どもたちとのつながりが薄くなってきたことは誰しも実感するものではないでしょうか。
テレビ・ゲーム・パソコン・ケータイetc・・・親から与えられた道具を片手に、子どもたちは自分の部屋へ身を潜めていきます。子どもたちが持つエネルギーは閉塞された一方通行の世界に費やされていきます。今は親が積極的に何かを教えるよりも、子どもの動きを温かく見守る方がいいと思われているところが、少なからずあるように思います。だが、それに偏りすぎてしまうと結局は放任となり、子どもは何をやっても何も言われないまま育ってしまう恐れがあります。だからこそ、親がちょっとの時間、一緒に絵本を読んだり、わらべうた等で遊んだりしてコミュニケーションをはかると共に、父祖から受け継がれた文化を次世代に伝えていくことが大切であると思います。
この果てしなく続く大空と広大な大地の中に、私たちは人間として存在しています。決して人間が一番であったり、人間が最も大切な存在であったりはしません。どんな生きものも人間のために存在しているのではなく、人間もあらゆる生きものの仲間の一員です。この「関係」から生まれる出会いの喜びや別れの悲しみなどを体感していく中で、他者の存在を認め、相手を思いやる心を育んでいきます。そのことを教えてきたのが家庭や地域という貴重な「場」ではなかったでしょうか。お寺を「場」とし、改めて関係性を考える。それが「絵本ではじめる講習会」の意とするところだったと思います。
最後に、今回の講習会は、約5時間に及ぶ長丁場の講習会でしたが、青田さん・茨木さんという素晴らしい講師に恵まれ、得難いお話をとても楽しく聞かせてもらったことで、あっという間に時間が過ぎていきました。この講習会の講師を快くお引き受けいただいた青田さん、茨木さん、また企画の段階から的確なご指導をくださった齊藤園長先生、そして、遠方にも拘わらず参加くださった方、本山教育部よりお越し頂いた孤野さん、山崎さん、並びに実行委員の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
「絵本ではじめる講習会」実行委員 中根慶泉