2011.04.27
放送システム開発会社のヨーズマー(金沢市)は、地域限定の携帯端末向け地上デジタル放送「エリア・ワンセグ」の事業を本格展開する。総務省から免許を取得して、19日から京都・東本願寺で実験放送を展開。自治体や商業施設が実施するワンセグ放送についてもシステム構築や専用機器の販売で支援する。総務省が進める空き周波数帯(ホワイトスペース)の活用策として有望視される地域ワンセグを新たな事業の柱に育てる。
東本願寺の実験放送は、真宗大谷派から受託した宗祖親鸞の七百五十回遠忌法要。50年に1回の「御遠忌(ごえんき)」で東本願寺(京都市)に来訪する信徒向けに5月下旬まで放送する。真宗大谷派と取引がある北陸銀行グループが協賛し、数百万円の資金を拠出。ヨーズマーが同派の代理人として総務省から実験免許を取得した。
東本願寺が製作した映像に、ヨーズマーが同寺や御遠忌について解説する文字データを加えて、境内から南と東の方向にワンセグ電波を発信。境内のほか、約500メートル離れたJR京都駅などでも受信できるようにする。
実験放送では携帯電話やカーナビの全地球測位システム(GPS)で一人ひとりの視聴者の受信位置を把握。大型の木造建築物が電波に与える影響なども調査する。
総務省は今月に入り、デジタル放送電波の空き周波数帯(ホワイトスペース)の有効活用策をさぐる「ホワイトスペース特区」として25件のプロジェクトを選定した。その多くは地域情報などを発信するエリア・ワンセグ放送で、ヨーズマーは自治体や商業施設運営会社がかかわる数件の放送システム構築を受注する予定だ。
同社は昨年、ルネサスエレクトロニクス(東京・千代田)などと共同で、インターネット上の動画コンテンツなどを安価に放送波に変換できる機器を開発した。この機器をエリア・ワンセグを展開する事業者に販売するとともに、コンテンツ製作やデータセンターの運営を含めたサービスを提供していく。
同社はケーブルテレビ向けデータ放送システムが主力で、2011年4月期の売上高は約7億円。現在、全体の1割未満にとどまるエリア・ワンセグ事業を今後の成長分野として強化する。
(日本経済新聞より転載)