2021.06.07
2021年5月24日、戸次公正氏(大阪教区)を御講師に、企画部会公開講座「世襲を通して寺院の未来を考える」が開催されました。
ご講義にあたりたくさんの資料をご提供いただき、「いのち」とは何か、「世襲」とは何かということから、本願寺教団や真宗寺院の歴史と構造、さらには宗憲の問題性など、色々な方向から世襲と寺院ということをお話しくださいました。
その中でも特に、「お寺は仏さまのものになっているか」という問いかけにはハッとさせられました。これまで「お寺は住職のものではない」の後に続く言葉は、「お寺はご門徒さんのもの」だと思っていましたし、そのことをお寺を預かる者は忘れてはいけないのだと思っていました。しかしそれは お寺=場所(建物) 住職=役割(仕事) という限定的なとらえ方をしていたのかもしれません。
確かにお寺は御本尊を中心とした御堂があり、聞法道場として機能するのに必要な設備があります。法務をはじめとしお給仕・お掃除・おみがきの他にも、建物の修繕・設備点検など、お寺を預かるものとしての仕事は多岐にわたります。そのような役割を頂きながら、折に触れて「やっぱりお寺はご門徒さんのもの」だと感じることはあっても、「お寺は仏さまのものになっているか」という事は考えたことがありませんでした。
お寺に生まれていなければ(お寺の人と結婚していなければ)、お念仏の教えに出遇うことなく一生を過ごしていたのかもしれません。今となっては本当に有難いご縁だったと感じている方も多いと思います。ですが、少子高齢化や過疎化が進み、お寺を維持していくことが難しくなっていくことが予想される今、お寺を預かる者にとってもご門徒さんにとっても、後継者問題は気がかりだが声を上げにくい問題になっているのではないでしょうか。世襲の功罪を問うというよりも、どうしたら真宗寺院が「仏さまのもの」としてお寺の本来性を見失うことなく、次の世代へと受け継いでいくことができるのか、大切な課題ではないかと思います。
(報告者 : 泉 清香)