2022.02.28
2021年度、公開学習会「是旃陀羅」が2022年2月17日に開催されました。当初、集会型とWeb型との併催を予定していましたが、新型コロナウイルスの全国的な急拡大を受けて、すべてZOOMを用いての受講形式に変更いたしました。しかしながら、当学習会は本年度で三回目となりますが、現在の状況下の中で、こうして継続して開催できましたことに感謝申し上げる次第であります。
さて、本年度は、大谷大学名誉教授の宮下晴輝先生(専門は仏教学)をお迎えし、「仏教経典における社会差別批判と差別表現」と題して、約2時間にわたる御講義いただきました。
ここで宮下先生に御講義いただきました一部を紹介いたします。今回、次の三点について御講義いただきました。「(1)インドにおける社会差別」、「(2)仏教における社会差別批判」、「(3)経典・律などに見られる差別表現」の三点であります(上記、名称は配布資料に基づく)。(1)では、現代のインド社会にも根深く存する社会差別、すなわち「カースト制度」と呼ばれるインド特有の身分差別制度について、古代インドにはじまる歴史的な変遷過程の諸段階(紀元前1500~紀元後1200年頃迄)があり、その中で「旃陀羅」の語の起源、および旃陀羅が「不可触民制」へと変容していった歴史的な過程についてお話いただきました。次に(2)では、インド社会における身分差別に対して、仏教がどのような態度をとってきたのか、そのことを仏教経典の中で最古層に位置する経集(スッタ・ニパータ)、および南伝所蔵の長部ニカーヤ経典に特筆すべき経説があり、そこでは身分差別に対する仏教全般の立場が説かれていることを教えていただきました。また次に(3)では、阿含経典、大乗経典(般若系経典、法華経、華厳経、観経)、律(十誦律、有部律)などの諸経典に見られる「是旃陀羅」の用例を紹介いただきました。それら諸経典の言句表現には、当時のインド社会の差別意識に符合していくような差別観念が明らかに認められることを教えていただきました。(3)の考察を通して、『観経』序分をどのように紐解いていくべきなのか、その視座についても教えていただきました。最後に部落解放同盟広島連合会(広島県連)の故小森龍邦氏が「是旃陀羅」問題について絶えず訴えてこられた課題、そして真宗大谷派に何が問われているのか、その問題の所在について提言をいただき講義終了となりました。
質疑応答の時間では、『観経』序分をめぐっての多くの質問、また他には仏教の経典観に関する質問をいただき、講師との活発な質疑が交わされ閉会となりした。この度、ZOOMを用いての学習会でしたが、100余名におよぶ多くのご参加を頂きましたことに御礼を申し上げ、引き続き北海道教区において、「是旃陀羅」問題についての学習をより一層深めて参りたい所存であります。また当学習会の詳細につきましては、『北海真宗』五月号にてあらためてご報告いたします。
(報告者 楠 宏生)