2025.05.07
4月23日から25日の日程で青森県の国立ハンセン病療養所松丘保養園と東京都の国立療養所多磨全生園、国立ハンセン病資料館を訪れ、現地学習会を行いました。
初日は青森へ移動、午後から松丘保養園を訪問しました。まず納骨堂にて勤行をし、その後回復者との交流会や自治会長さんからご講話をいただきました。
交流会では5名の回復者の方々とお話しすることが出来ました。入所当時についての事や昔行っていた他の園との交流会について、そして現在の園の様子についてお話しいただきました。
今回交流させていただいた方の中には、ここ数年の間に園に再入園された方もいると聞き驚きました。その背景には、ご病気をされたり一人で生活することが困難になった際、園外の介護施設ではハンセン病の後遺症のある方を介護する知識がなかったり、現在も続く差別や偏見への恐怖心のため再入園せざるを得ないという事情があるのではないかと思いました。
自治会長さんのご講話では、ご自身がハンセン病に感染した時の心境、家族との関係、園の将来構想についてお話頂きました。現在、園にある納骨堂には1181人のお骨が納められていると教えていただきました。自治会長さんは「ふるさとに帰りたくても帰れない人達、この人達が頑張ってくれたから今の自分達の生活がある。将来この納骨堂だけでも守っていきたいけど、どうしたらいいか分からない」と仰っていました。自治会長さんだけではなく、入所者の方々は将来この納骨堂や園がどうなっていくのか心配されています。私達も納骨堂や園をどう守っていくのか考えなければならないと実感しました。
二日目は、多磨全生園を訪問しました。始めに学芸員の方に園内を案内していただき、園内にある納骨堂にて勤行をしました。その後園内にある「なごみ食堂」にて堕胎により産まれることが出来なかった子どもを題材にした紙芝居の朗読を鑑賞しました。午後からは、東京教区宗泉寺住職の旦保立子氏より真宗報恩会と真宗大谷派とのかかわりについて、ご自身の経験を踏まえてお話しいただきました。その後園の自治会長さんや学芸員の方と、交流会を行いました。
始めに旦保氏はハンセン病問題について「私たちは病気について正しい事を知らされなかった被害者でもあり、差別に加担した加害者でもあるという二面性をもっている」とお話下さいました。また「大谷派内においてもハンセン病問題をいつまでやるのかという意見もあるが、(顔が知られると家族に迷惑が掛かるかもしれないという理由で)未だに写真は撮らないでほしいという人や、後ろからなら撮ってもいいという人がいる。まだ何も終わっていない」とお話下さいました。最後に「(大谷派の過去の過ちを)善悪だけで判断するのではなく、それを私たちが学び次につなぐということが大切」と仰っていたことが印象に残っています。
その後の交流会では、自治会長さんは終始笑顔でお話をして下さいました。冗談を交えながら楽しく話される中に時折語られるご自身の経験をお聞きすると、その笑顔の裏にはたくさんの苦労があったのだと実感しました。
三日目は、国立ハンセン病資料館を訪問し、ハンセン病の歴史を学び、回復者の方が「自分も生きているんだ」と表現した作品などを見学し帰路に就きました。
らい予防法廃止から今年で29年になりますが現状は何も変わっていません。ハンセン病がどのような病気か全く知らない人や、間違った情報を信じている人もたくさんいます。その中で正しい情報をより多くの人に発信していくにはどうすればいいのか、考えていかなければならないと今回、旦保氏のご講話や回復者との交流会を通して実感しました。
また今回訪問させていただいた園は二カ所とも入所者の平均年齢が88歳でした。これから先直接お会いし交流することが難しくなってきます。その中で回復者の方々と直接お会いし交流できる今を大切にしながら学びを深めていきたいと思います。
(報告者:門間 大樹)
【多磨全生園にて(左から講師の旦保さん、学芸員さん、自治会長さん)】
【多磨全生園納骨堂】
【ハンセン病資料館(男性寮の再現)】